喫茶店の時代/林哲夫
喫茶店という言葉だけを見て図書館で借りた本だけど、これがなかなか面白かった。
まず「はじめに」で、本書は喫茶店の本ではないと謳っている。
喫茶店案内ではないし、経営の指南書でもないとのこと。
著者自身ほとんど喫茶店には入らないし、本書のためにとりたてて喫茶店を訪問調査することもしなかったというので首をかしげてしまった。
この本は何かといえば、コレクションであるという。
喫茶店という文字を見つけるとメモをし、喫茶店の写真や絵も手許にためこんでいく。
子どもたちが牛乳瓶の蓋やきれいな小石を集めるように。
なんて面白いんだろう。
この「はじめに」を読まずに本文を読み始めてしまった私は、とても興味深い内容だけどいったいどういう趣旨の本なのかと疑問に思っていたのだけど、それはきちんと最初に書かれていてそれを読んだ瞬間謎が解けた気持ちになった。
それくらい中身はコレクションに徹している。
今もなじみのある喫茶店、名前だけは聞いたことのある喫茶店、それらが回顧としてではなく当時の目線で綴られている。
自分の知らなかった喫茶店の一面を見れて面白かった。